ペース・メソッドの広場

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2014/03/03

演奏力をつけるために (第1部)

ピアノは指と頭 そして心で弾く

~音楽的なレパートリーをたくさん弾かせましょう~

ジャパンディヴィジョンエリア・コーディネーター 神保洋子

ピアノが発明される前までは鍵盤楽器は、ヴァージナル(16-18世紀にヨーロッパで使われた、チェンバロの親戚にあたる小型の撥弦鍵盤楽器)などのようなものしかありませんでした。
17世紀に、弦をはじくのではなく、たたくタイプのピアノが発明され、出来上がってくると、一つの楽器でオーケストラの様な強弱の効果が出せるようになりました。
そこで、「ピアノ・フォルテ」というのが、その名前でした。
私たちは今、省略して、ピアノの方だけを呼んでいます。
従って、ピアノ(弱)とフォルテ(強)の違いを出すことが、この楽器の良さです。
それまでは、パターンの複雑さやテンポで、盛り上がりの感じをだしていました。
しかし、ピアノが出来てから、今まではオーケストラやアンサンブルでなくては出せなかった強弱の効果が、一つの楽器でも出来るようになり、タッチの違いで表現の巾が広がりました。
この楽器を使ってどのように音楽を作っていくか、音楽家やピアノの先生たちは、いろいろ工夫をしてきました。
ロバート・ペース博士も、ピアノ音楽の素晴らしさを我々に教えてくれる音楽家の一人です。

音楽の表現に大切なことは、いろいろあります。
タッチの硬さ、柔らかさ、アーティキュレーション、スピード感、そして強い弱いなど、自然に伴っていなくてはならないことばかりです。
従ってピアノを弾くということは、鍵盤を正確に押していくことではなく音楽表現が伴われなければならない、というあたりまえのことを、導入から教えていかなければなりません。
素質というものがあって、私たちが子どもを長い間沢山扱ってきた今、そのことは全く否定はできません。
ハーモニーも音の構成もなんにも解らなくても、自然に音楽に乗り、上手に表現する子どもが時々います。
幸いそれは、生まれつきとみることも出来、ひとは恵まれているとか恵まれていないとか言います。
しかしそれがどこまで続き、どこまで頼りにできるかは分かりません。
ピアノの先生としては、そうしたたまたまといったものを対象に、仕事をするわけにはいきません。
第一に、一番多い一般的な子どもの事を考えていかなければなりません。

まず導入が決定的に大切ですが、どのレベルもそこでやったことを継続して、段階的に積み上げていかなければなりません。
導入から考えてみましょう。
そこではまず、標題的な解釈が簡単に考えられます。
まず、3才とか5才のモペットやキンダー・キーボードから考えてみます。

パンやさん「ほかほかやきたてパンやさん」のところで、パンがオーブンの中でみるみるふくらんでいく様子を、目の当たりに感じながら、クレッシェンドをやります。
グループ・レッスンではだれのパンが、いちばんふっくら柔らかくおいしそうに焼けたか競い合って表現をやります。
あるいは、聴いているお友だちも、パンがきれいにふくらんでいく様子が感じられたか、言ってあげられます。

雪だるまも、どうやって転がしたら一番形のいい雪だるまが出来るか、クレッシェンドを上手にやります。
太陽が出て、せっかく出来ている雪だるまが解けるときには、ディミヌエンドのやり方を考えます。


パンやさんのメロディでもそのような歌詞なしで、先生がだんだん強くとか弱くとか指示をして、子どもに強弱をやらせることは出来ます。
それは、子どもの自然の欲求から出てきた表現ではありません。
子どもはどのような表現をしたら良いか解らなくても、ただ言われたとおりだけやることも出来ます。
それは子どもの内面から、自然に出てきたものではありません。
従ってモペット、キンダーのレベルでは、具象的なものを設定すれば解りやすいし、楽しむことが出来ます。
このレベルの時から、このような表現を常にしておくことは大切です。

いろいろな表現をするためには指の使い方、手首の使い方に工夫が要り、グループで、お友だち同士で、いろいろな方法をやってみることが出来ます。
(つづく)

『研究会ジャーナル』NO.41(2009年5月号)より抜粋