ペース・メソッドの広場

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2014/04/01

演奏力をつけるために (第2部)

ピアノは指と頭と そして心で弾く

~音楽的なレパートリーを、たくさん弾かせましょう~


ジャパン ディヴィジョンエリア・コーディネーター 神保洋子

音楽表現が自然に出来るようになっているかどうかは、導入での習慣が大切ですが、結局最終的に上級レベルに行ってからが、その真価が問われることとなります。
まず、テキストをしっかりマスターすることが大切なのは、言うまでもありませんが、それだけでは実は意味がないので、レパートリーが音楽的に弾けるようになっていくためには、色々な曲に接し、特に大作曲家の作品を、出来るだけ沢山弾かせることも大切です。
何を弾いても、音楽的に弾けるようになっていなくてはなりません。

しかしピアノは、音だけ出すのは簡単で、ピアノを習い始めるとすぐに楽器をたたきがちです。
そして、"音楽には、心と頭と、それがあって初めてテクニック(指)も活かされてくる"という、ペース博士の基本理念を忘れられがちです。
また、ペース博士はよく"フロー"という言葉を使います。
音楽は、流れです。
そして自然に心の中で動いていき、心の中でその動きに沿って、歌えていなければなりません。
ピアノを指導する時、そうした基本的なことを私たちはいつも、踏まえていなくてはなりません。

音楽的に指導するためにはどうしたら良いか、いろいろポイントを考えて見ましょう。
一般的には、ピアノおよびピアニッシモが苦手であるために、きれいな表現が出来ない場合が多いようです。
ペースのデュエットの中に"Lost in a Fog(霧の中で)"という小品がありますが、これなどは大変効果的です。
初級後半のレベルのグループが大勢で、ペース先生の指揮で演奏したことがありました。
見事なピアニッシモで、一糸乱れずに音楽が流れていきました。
フローとはこのことだったと分るような、音楽の流れでした。
一人でも違う、硬い大きな音を出している子どもがいては、流れはぶちこわされます。
全員が、小さな柔らかいピアニッシモで弾けていなければ、このような音の流れは作れないでしょう。

全体を大きな音で弾きまくり、あまりピアノが作れない子どもがよくいるものですが、ペース博士はよくコンソルディーノを踏むように要求しています。
その気待ちもよく解りますが、しかし私たちは、生徒がそれを使わなくても美しいピアニッシモが出せるように、訓練しなくてはなりません。
フォルテは強く打鍵することで作らなければならないこともありますが、体の重さをかけることにより、ずっしりとしたフォルテの音が要求されている場合もあります。

常にどうゆうタイプの音が適しているのか、時代により、あるいは作曲家により、また前後の関係により、最も適切な音が自然に出せるようになりたいものです。
能力の開発は、導入から続けて段階を追っていくものですが、次のレベルに入っても、音楽を読み取る訓練は変わりません。
フローを感じ取る力を付けるよう、全体の流れを観察し、音がどのように動いていっているか、まずそれを掴んでから弾く習慣を、常に忘れないようにしなければなりません。
強弱、音程の変化、そしてレベルが上がるに従い、アーティキュレーションも複雑さを増してきます。
長いメロディの動きであったり、連打音であったり、繰り返しやパターンの変化や反転のさせ方、パターン・シークエンスの動かし方でどのような表情付けをするか、考えてから弾き始める習慣を作っておくことが大切です。

どのレベルでも、あるいはどんな曲と取り組んでも、音楽的に弾けるようにならなくてはなりませんが、指導上明確にその結果を出せるような作品を選んで、与えることも必要です。
若い生徒に、あまり内面的なものを要求しすぎても、簡単に理解されるとは限りません。
難しいことを無理に要求するよりも、表現したことがすぐに顕著に出せるようなものを、与えておくのも得策でしょう。
中級レベルなら、ペース・シリーズ"マスターワークス2"の最後に載っているベートーヴェンのソナチネは、ドルチェで優しく歌った後、手首を使って躍動した感じを出したり、生き生きした表現が出来ます。
もう少しレベルが上がって来た生徒には、シューベルトのアンプロンプチュ A♭major Op.90-4など、ピアニッシモで内向的に歌った後、体の重さをかけて重たいコードが続きます。
ペース博士が良く弾いてくれて、日本の先生たちにもなじみ深い、モーツァルトのファンタジー d mainor k.397も良い素材です。
ドビュッシーとラベルにも、表現をいろいろ試みられる作品は沢山あります。

まず、自分でも考える。
そして、お友達にも聴いてもらう。
友達の弾くのも、聴いてみる。
そしてお互いに、良いところ、面白いと思ったところ、あるいは感動したところなどを見付けながら、曲を仕上げていく。
もちろん最終的には、先生からもより良い方向の示唆を受けることが出来、そうしてどんどん沢山のレパートリーを仕上げていく...。
とにかく、ペース博士のいつも強調されるように、短くても良いから、いろいろ表現してみられるレパートリーを、沢山弾かせる事が大切です。
このことは結局、どんな長い作品にも繋げていけることになります。

『研究会ジャーナル』 No.41 (2009年5月号)より抜粋